なぜ、血圧を測らねばならないのか、なぜ、自宅で測るのが良いのかという点については、ドクターに解説してもらうことにして、ここでは、長年計測し記録し続けてきたことから得た私自身の経験でもって、血圧の測り方、記録の仕方について書いてみます。
その上で、ドクターからのコメントをもらうことにしましょう。ドクターからのアドバイスは、このサイトのドクターアドバイスをご覧下さい。
【血圧計はどんなものが良いか】
手動式、上腕巻き付け式、上腕アームイン式など、実際に試してみて、使いやすそうなものを選べば良いと思います。主なメーカは、オムロン、テルモ、パナソニックですが、写真のものはテルモ製です。長い旅行に行くときはやや小さめの上腕巻き付け式を持っていきますが、自宅で常用しているのは、このアームイン式です。使い方が簡単だからです。
どの血圧計でも(価格帯が同じであれば)メーカによる差はほとんどありませんでした。
差が出るのは、腕をおいた位置(後述)が原因であったようで、上腕式と手首式も位置を正しくして測った場合はほとんど差はありませんでした。
最近は、メモリー機能のついたものやネットに接続できるものなど高機能のものがありますが、私は、記録や管理には、「毎日元気」アプリを使うことにして、測る機能しかついていないものを押し通そうと思っています。
「毎日元気」に記録すれば、パソコンにデータを送信しておいて、長い間のデータを保存できるからです。
また、測る事以外の機能がつくとその分、値段が高くなるのだと思っているからです。
【測る位置】
測る位置が一番大事です。これを間違えると測る意味がありません。
実験してみるとよくわかりますが、血圧の数値は、測る位置によって動きます。
位置とは、測定部位の高さ(上腕式なら測る上腕の高さ)のことです。
腕の位置を「心臓の高さ」にきちっとあわせねばなりません。
スポーツジムや病院の待合室で測っている方をみると、その位置がかなりずれていることがあります。他人からみると一目瞭然なのですが、本人は、それがわからずにいるのか、知らないでいるのか、見ている私はとても気になります。
もし、130ー75 と出たとしても、測定器に入れた上の位置が心臓より10cmも上(高い)だったとすると、本当は、138-82と考えねばなりません。
というのは、10cmで8mmgの差があるのです。
135-92と出ていたのが、ほんとは、143-100 だったとすると嫌ですよね。
計測には(どんなものでも)常に誤差がつきものですが、あるいは、血圧は常に変動しているものですから、それに加えて、この高さによるバイアスがかかると、測る意味がなくなってしまいます。
それにさえ気をつければ、寝っころがって測っても左右の腕を変えて測っても、ほとんど影響=変化はありませんでした。試してみるとわかります。
【測る時間】
いつ測ると良いかというと、朝と晩です。でも、私の場合は、特に朝を大事にしています。それには意味があります。
早朝高血圧です。
自分の血圧の値を知るのは、たいがいが、健康診断か何かの病気で行った医院でですね。その時間は、朝といっても、10時から12時か午後に入ってからでしょう。
そのころは、身体の活動が軌道にのり、体調も安定している時分です。体調の安定に影響を及ぼすのは交感神経の働きです。
交感神経は、身体の活動を担うもの起きたばかりの時は、「さあ、今日も一日がんばるぞ」と、身体が活発に動くための準備を始めているのです。
私は24時間血圧計測をしてみたことがあります。
それをみると、起きる前からもう血圧は上昇していました。
明日は、6時に起きるぞとこころに言い聞かせて寝た場合、目覚まし時計が鳴る前に目覚めることが多いとおもいますが、これは、きっと、心に刻まれたその時刻が近づくと、交感神経が働き始め(交感神経を働かせる他の機能が働く)、さらに、その他の活動をもたらす準備が身体に整ってくるのだとおもいます。
目覚めた直後に測ってみて、前夜測ったときは低血圧症かと思うほど血圧が低かったのに、どうしてこんなに高いのか、ひょっとしたら測定誤差かもしれないと、目を疑うようなことが何度もありました。
しかし、会社に出てから保健室にいって測ってもらうとそうでもなくて、「安心」する。
これがいけないのですね。
この、早朝に血圧が高いということをドクターに相談して、「早朝高血圧」ということを知りました。
そして、これが一番危ない、なぜなら、自分では正常と思い込んでいるため、と言われます。
確かに、早朝のジョギングをしている人が倒れたという話はよく聞きます。
朝晩1回ずつはかる、特に朝が大事だというのはこういうことからです。
【脈=心拍数】
測ったときには、脈=心拍数も測って記録しておくと良いです(と、ドクターに言われました)。なぜそうなのかと、主治医に何度も尋ねるのですが、「異常の有無をみる」と言われます。
数値的にいくらでないといけないというような基準はないようです。
長いこと測り続けていると、自分でもその異常がなんとなくわかるような気がしてきます。ほんとのところはどうかわかりませんが、主治医は、前述のように、「異常の有無をみる」のだそうです。
私の場合、朝は、50から60程度が普通です。ところが、時々、70くらいのときがあります。前の晩にお酒を飲み過ぎたのか、何らかの原因があります。これがわかるのも、朝の血圧の数値と脈拍の数値とをドクターに見てもらうことができるからです。
そこで再度注意点を列挙します
測る時間は、朝と晩が欲しい。もっと欲張ると、朝、昼、晩の3回。でも、1回だけ測るとしたら、朝のみ。
朝は、起床後15分以内
(ア) トイレをすませた後
(イ) 新聞や本を読むなどの活動を始める前
(ウ) 朝食前、当然薬はのまず。
(エ) 測る姿勢は、ゆったりといすに座って、測る位置は心臓の高さときちっとあわせる。2回深呼吸をしてからスイッチ。
晩は就寝の前
(オ) トイレのあと
(カ) 食事はすませて2時間以上たってから。
(キ) 測る姿勢などは、朝と同じ。
なお、朝の測る時間については、日本高血圧学会の家庭血圧測定の指針では、朝は、起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前の安静時、晩は就床前の安静時とありますが、僕の場合は、1時間も経つとかなり安定して(低く)なってくることがわかってきましたので、異常を発見するため、15分以内にしています。
血圧の上下二つの値の意味
血液は血管を通って全身の細胞に酸素や栄養分を運びます。心臓はポンプです。血液を送り、また、もとに引き戻しています。心臓が収縮して血液に圧力をかけ血液を大動脈に送り出します。このとき、血管の壁に高い圧力がかかります。これが上の値=収縮期血圧です。押し出される血液の圧力によって、血管の壁にかかる力です。
血液を引き戻すためには、心臓は拡張します。このときに血圧は低くなります。これが、下の血圧(拡張期血圧)です。
専門のドクターは、上の値、下の値がそれぞれどうかということで、動脈硬化の進み具合を判定するようですが、私たち、患者側は、ドクターに正しく診断してもらう材料を提供しなければなりません。
【患者と医師の共同作業】
健康は自分のものです。
自動車の持ち主が、エンジン修理を依頼するとき、どういう調子なのかあまり詳しく説明しなくても、修理工場の技術者はなんとかうまくやれます。なぜなら、それは、修理工場に持ち込んであちこちと点検し、不具合も再現できることが多いからです。しかし、生身の自分の身体は、分解点検ができません。
動いている状態をできるだけ多く伝え(判断にとって大事なポイントを)、医師に正しく診断してもらうことが大事です。
異常の有無と原因の推定をしてもらうのですから、判断材料は正確なものを多く提供した方が良いはずです。
そのために、1.に書いたような注意点を気にしながら、ある程度の期間にわたって継続的に記録しておくことです。
私の場合は、何年も測り続けていますが、やはり、記録は散逸しています。
この「毎日元気」アプリのPC管理ソフトはそれを防ごうとして用意したものですが、それはさておき、
長年付け続けていると、その傾向を数値でもグラフでもみる事ができるようになり、飲んだ薬が効いているのかどうかが推定されることがあります。
実は、血圧の薬を飲んでも効くのと効かないのがあります。
それを判断するには、継続記録が大事です。
ぜひお勧めします。
【それでも難儀】
このようなことが分かっていても、なかなか測り続けられない、記録を忘れるということです。
では、私がどうしてこんなに一所懸命しているかといいますと、それは、身体の中に刻まれている「観測地点」のようなものが存在しているからです。
頸動脈の狭窄です。
頸動脈の狭窄は、首のところの頸動脈に動脈硬化が発生し細くなることですが、それは、生活習慣によって引き起こされるもので、ここに血管の狭窄が出ているとすると、心臓の周りや手足の血管など全てにわたって発生している可能性がある訳ですが、私の場合は、6年前の測定でこれが38%でした。
38%はたいしたことではないと言われます。が、動脈の狭窄は、治療してもなかなかなおらない、もとに戻らないとも言われます。
この数値を悪化させないようにすることが、関の山だというのです。
イメージとしては、水道管にゴミが付着しているのではなく、水道管が腐食して変質しているのと同じです。
長年、管の中を通る悪いものによって、管の材質が変化し、腐食し、もうもとにもどらない、というイメージです。
この頸動脈が私の定点観測地点です。
ですが、それをしょっちゅう観察しても意味がありません。それは、一つの結果で、その前段の原因には血圧があり、さらにその前段の原因には食生活をはじめとする生活習慣がある訳です。
原因と結果の連鎖になっているのだとおもいます。
この原因と結果の連鎖のどこかに介入して、これ以上の悪化を防ぐ。せいぜいできるそれにチャレンジしています。
そして、昨年測ったところ、37%でした。1%は測定誤差の範囲でしょうが、悪化はくい止めているといってよいはずです。
血圧測定の仕方・注意点に関して、私がお伝えしたいことは以上ですが、これに対して、若干ですが、ドクターからのアドバイスをもらいました。ドクターは、僕の若き友人坂口さん(情報通信医学研究所 坂口正芳博士)